2020年度12月研究例会(第192回オペラ研究会)

オペラ/音楽劇のキーワーズ

[第16回]

サルヴァトーレ・シャリーノ:《ローエングリン》(1982)―「音響化された身体」のコンセプト

◇報告者:北川千香子

◇日時:2020年12月5日(土)16:30-17:30
◇会場:オンライン開催
◇言語:日本語

概要

最も重要な現代作曲家の一人であるサルヴァトーレ・シャリーノ(*1947)は、特殊な楽器奏法や歌唱法によって、ノイズ的なものに異化され、静寂との境界にまで切り詰められて様式化された、きわめて固有の音響世界を作り出してきた。彼のオペラ《ローエングリン》では、こうした特徴が際立っている。唯一の登場人物であるエルザの発する声は、もはや歌唱という枠を超え出て、例えば息づかいや喉を鳴らす音といった原初的な身体運動としてのそれであり、この人物像を不可思議な存在として現出させる。本発表では、2017年のザルツブルク・イースター音楽祭の演出(ミヒャエル・シュトゥルミンガー)を例に、上記の音響ドラマトゥルギーが上演空間の中でどのように具体化され、それがワーグナーの《ローエングリン》のエルザ像にはない新たな側面をいかなる形で提示しているかを明らかにする。
キーワーズ:サルヴァトーレ・シャリーノ/リヒャルト・ワーグナー/声/静寂/身体性/演出/モノドラマ

報告者プロフィール

慶應義塾大学准教授。ドイツ学術交流会の給付留学生としてベルリン自由大学にて演劇学を専攻、2013年に同大学で博士論文『クンドリー試論 象徴の諸断面』(Peter Lang, 2015)によってPhD.取得(演劇学)。専門はワーグナーの楽劇ならびにオペラ演出。近年は、ワーグナーから現代に至るオペラ/音楽劇における沈黙や静寂の諸相に重点を置いた研究をおこなっている。
※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

オンラインによる開催(Zoom使用)
司会:佐藤英
参加者:17人

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