Monthly Regular Meeting, May 2025 (228th Meeting of the Opera Research Group)
English follows Japanese
『バロック・オペラとギリシア古典』(大崎さやの・森佳子編著/辻昌宏・大河内文恵・森本頼子・吉江秀和著、論創社、2024年)合評会
発表要旨
『バロック・オペラとギリシア古典』は、2021年に開催したシンポジウムの研究発表をもとにした5編に書き下ろし1編を加えた論文集である。イピゲネイアは古代ギリシアの悲劇詩人エウリピデスの2編の悲劇の主人公として知られ、さまざまに翻案された後、ラシーヌの悲劇の成功により多くのオペラ作品で取り上げられた。本書では、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスの各地域において上演されたイピゲネイア主題、またはギリシア古典を主題とするオペラを、各地域の研究者が台本面、音楽面、上演面などから分析し、時代的な特徴や上演場所の地域性との関連を考慮に入れつつ検討した。以下が各論文の著者、題名、要旨である。
大崎さやの「イピゲネイア主題の18世紀のオペラ台本―ローマ、ウィーン、ヴェネツィア、ロンドン、パリで上演された台本を例に」
ギリシア悲劇に登場するイピゲネイアを主人公にヨーロッパ各地で書かれたオペラ台本を分析し、個々の特徴を述べた。
辻 昌宏「祝婚オペラとしての《シーロのアキッレ》」
メタスタージオ台本のオペラ《シーロのアキッレ》の生まれるきっかけと、その後、そのリブレットが初演とは異なる作曲家たちによって様々な機会に作曲された経緯と、バージョンによる主要な相違を明らかにし、祝婚オペラというカテゴリーを提唱した。
大河内文恵「18世紀のベルリンにおけるギリシア悲劇を題材とするオペラ:C.H.グラウンの2つの《イフィゲニア》を例に」
1728年ブラウンシュヴァイク、1748年ベルリンで上演されたグラウンの《イフィゲニア》を比較し、音楽史上の意義を考察した。
森本頼子「18世紀ロシア宮廷におけるオペラ・セーリア上演の実態:ギリシア悲劇を原作とした作品に注目して」
ラウパッハ、ガルッピ、トラエッタ作曲のギリシア悲劇主題のオペラを取り上げ、オペラ文化黎明期のロシアにおけるオペラ上演の一端を明らかにした。
吉江秀和「ヘンデルのギリシア悲劇に基づくオペラ《オレステ》の上演をめぐって」
《オレステ》は上演回数の少なさとパスティッチョを理由に低く評価されることが多い。本発表ではヘンデルが自身の劇団の歌手の技量を示すべくこの作品を上演した可能性を指摘する。
森佳子「グルックの《オリドのイフィジェニー》と《トリドのイフィジェニー》:新たなトラジェディ・リリックの誕生」
パリ・オペラ座で初演されたグルックの二つのオペラにおける、「観客の演劇的関心を逸らさない」ためのアプローチの違いについて明らかにした。
開催概要
- 日 時:2025年5月10日(土) 16:30~18:00
- 場 所:Zoom配信
- 発表者:大崎さやの(東京藝術大学)辻 昌宏(明治大学)大河内文恵(東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校)森本頼子(名古屋音楽大学)吉江秀和(杏林大学)森佳子(早稲田大学)
- 司会者:森立子(日本女子体育大学)
- 言 語:日本語
- 主 催:早稲田大学総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所
参加申込方法
事前登録が必要です。参加希望者はできるだけ前日の5月9日(金)までに以下のURLから事前登録をしてください。
URL: https://list-waseda-jp.zoom.us/meeting/register/tQ1E275vRL6VpLGR0s6jyg