シンポジウム
<モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム>
モンテヴェルディのオペラから広がるバロック・オペラの世界
概要
(第一部・第二部:個人研究発表と演奏 第三部:全体討論)
開会挨拶:荻野静男
趣旨説明:萩原里香
【第1部】イタリア
司会:宮川直己
- 大崎さやの
- 《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロ について~歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家~
- 辻昌宏
- カヴァッリの《エリオガバロ》は何故上演中止になったのか?
- 萩原里香
- 古代ローマ皇帝を題材としたオペラ ~イタリア・オペラを対象として~
以下、演奏協力:黒田大介(T)、末吉朋子(S)、中谷路子(pf)
演奏曲目
- 《ポッペーアの戴冠》第3幕より ネロとポッペーアの二重唱 “Pur ti miro”
- 《離宮のオットーネ》第2幕より オットーネのアリア “Compatisco il tuo fiero tormento”
【第2部】ドイツ、ロシア
司会:大野はな恵
- 荻野静男
- ラインハルト・カイザーのオペラ ~ローマ皇帝ものを中心に~
- 大河内文恵
- 18世紀半ば頃までのドイツ諸都市における古代ローマ史劇によるオペラの状況~C.H.グラウン《ブリタニコ》を例に~
- 森本頼子
- エリザヴェータ女帝時代(1741~62年)のロシア宮廷におけるオペラ・セリア上演~古代ローマ史劇を題材とした作品を中心に~
演奏曲目
- 《オクタヴィア》第1幕より ピソのアリア “Porto il seno”
- 《ブリタニコ》第2幕より アグリッピーナのアリア “Mi paventi il figlio indegno”
【第3部】全体討論
司会:岩佐愛
[報告]
- 中村良
- “ローマ物”への抵抗:17-18世紀フランスにおける音楽劇作品の題材
- 吉江秀和
- J.C.バッハの《カラッタコ Carattaco》(1767年ロンドン・キングズ劇場初演)~ロンドンで上演された古代ローマ帝国にまつわるオペラ~
演奏曲目
- 《カラッタコ》第3幕より トリノバンタのアリア “Non è ver, che assise in trono”
閉会挨拶:大河内文恵
【第一部および第二部の発表要旨】
バロック初期のオペラの黎明期、その発展に寄与したクラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)は、実在した人物を取り上げた世俗オペラ作品に初めて曲をつけた作曲家であり、古代ローマ皇帝とその愛人を扱った《ポッペーアの戴冠》がその作品である。シンポジウムでは古代ローマ史劇という歴史的題材を扱ったオペラが各地域でどのように発展したのか、モンテヴェルディのオペラから始まるレパートリー展開を再考した。
第1部ではオペラ発祥の地であり、古代ローマ帝国を有したイタリアを取り上げた。大崎は《ポッペーアの戴冠》の台本作者ブゼネッロの活動等からヴェネツィアにおける文学思想的背景を、辻はカヴァッリのローマ皇帝作品の上演が中止となった理由を当時の社会的背景を含めて論じ、萩原が1700年代までのイタリア・オペラの作品調査を行い、イタリア内外で同テーマがオペラ題材として使用されていた状況を提示した。第2部ではドイツとロシア(イタリア・オペラの影響が強かった地域)を扱った。荻野が《オクタヴィア》などを書いたカイザーの活躍した自由都市ハンブルクについて、大河内が宮廷都市ベルリンにおける古代ローマ皇帝ものオペラの取り扱いについてグラウンの作品を中心に論じ、そして森本がロシアで上演された古代ローマ皇帝もののオペラ・セリアについて、その導入と受容について明らかにした。第3部ではそれ以外の地域(フランスとイギリス)の報告をまじえつつ、全体討論を行なった。独自の音楽劇文化を持つフランスでは、ローマ物はもとより歴史的題材を扱うことにすら一種の抵抗を見せていた事実を中村が解き明かし、イギリスでは古代ローマ皇帝を登場させながらも愛国心にあふれた作品が上演されていた点を吉江が明らかにした。各部の最後には、テノールの黒田大介、ソプラノの末吉朋子、ピアノの中谷路子を迎えて、研究発表内容に関わる作品の生演奏が行なわれた。
【第三部における質疑応答】
オペラ台本の構成について、《ポッペーアの戴冠》の年代を境にこれまでの5幕構成から3幕構成になったこと、台本が5幕構成であっても3幕構成でオペラが作られた例もあることに対して、その理由の見解を求められた。古典の規則を巡る新旧論争やスペイン演劇からの影響が考えられること、またヴェネツィア・オペラの商業のためという上演目的には5幕では長すぎるという理由もあったかもしれないとパネリストから代表して大崎が返答した。
報告者プロフィール
※プロフィールは発表当時のものです
開催記録
チラシ
こちらからダウンロードできます(researchmap 萩原里香氏のページ)
当日配布資料
こちらからダウンロードできます(researchmap 萩原里香氏のページ)
関連報告など
「バロック・オペラ」ワーキンググループ編 <モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム>「モンテヴェルディのオペラから広がるバロックオペラの世界」報告書 (発行:早稲田大学オペラ/音楽劇研究所) 2018年3月, 50p.