2016年度6月研究例会(1) (第149回オペラ研究会)

研究発表

ライプツィヒにおける「コンセール・スピリチュエル」の公演内容と変遷:宗教作品とオペラと交響曲

◇発表者:小石かつら
◇日時:2016年6月4日(土)17:00-18:30
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 26号館(大隈記念タワー)1102会議室
◇言語:日本語

概要

民間オーケストラとして世界最古の歴史をもつライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は、1781年より今日まで継続して年間20回程度の演奏会を開催している。その最初期には三種の演奏会、すなわち「予約演奏会」、「コンセール・スピリチュエル」、「慈善演奏会」が並行して開催されていた。しかしこれらは時代が下るにつれ、「予約演奏会」に一本化されていく。この予約演奏会は、初期においては「声楽曲がプログラムの中心に置かれたスタイル」であったが、1800年初頭以降、「オペラを模した構成によるスタイル」と「交響曲を中心に据えたスタイル」の共存状態となる。そして 19 世紀後半以降は徐々に、後者が主流となる現在のスタイルへと変遷してきた。

本発表では、1847 年までの演奏会記録を調査対象として、このような変遷をしていく「予約演奏会」に、「コンセール・スピリチュエル」がどのように組み込まれていったのかを明らかにした。「コンセール・スピリチュエル」は、予約演奏会のプログラム内の声楽作品の部分を、宗教的な声楽作品で置き換えて構成された演奏会で、12 月と 2〜3 月に開催されていた。この「コンセール・スピリチュエル」は、予約演奏会のプログラム構成の変遷に追随して、その構成を変遷させ、常に、予約演奏会の声楽部分が宗教作品に置き換えられるスタイルであった。また「コンセール・スピリチュエル」という演奏会の名称は、1808/09 年のシーズンで消滅するが、宗教的な作品を含む演奏会は、それ以降むしろ増加したことが明らかとなった。しかし、本来「コンセール・スピリチュエル」が有していた顕著な季節性は失われることとなった。

発表者プロフィール

京都市立芸術大学大学院ピアノ専攻修了。ライプツィヒ大学およびベルリン工科大学(音楽学)留学、大阪大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。現在、京都大学白眉センター特定助教。共訳書に『ギャンブラー・モーツァルト』等、共著に『ドイツ文化史への招待』等。F.メンデルスゾーンと近代的演奏会の成立と変遷について研究をすすめている。

※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

参加者:18名

質疑応答

質疑応答では、調査対象としたプログラムがいつ配布されたものなのか、事前に配布されていたのか、当日に配布されたのか、また、曲目変更の有無について等、資料そのものに対する質問が多くあり、さらには、演奏会の開催時間や、プログラム選定委員について、新聞報道等、多岐にわたる質問が活発になされた。