[特別企画]ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》(オペラ彩12月公演)をめぐって
第1部 イントロダクション:オペラ史のなかの《ルチア》
◇発表者:丸本隆
第2部 《ルチア》制作の現場から
◇発表者:和田タカ子
◇日時:2015年11月7日(土)16:00-19:00
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 22号館 202教室
◇言語:日本語
概要
オペラ彩は埼玉県の一都市を拠点に30年以上にわたりオペラ公演を続けてきた非営利活動法人であり、その活動は地方・地域に根ざした本格的なオペラ上演の実践という点で、日本には数少ない注目すべき事例といえる。そのオペラ彩は現在、ドニゼッティの《ランメルモールのルチア》の12月公演を企画中であるが、本発表の目的は、それを機に制作現場との交流を通じてオペラの学術研究の深化を目指そうとするものであった。第1部では研究者の立場から、18世紀後半以来のオペラ改革の一つの到達点としてのこの作品の歴史的意義を探りつつ、作品分析に際してのいくつかのポイントを考察し、特にその「ロマン主義」、「狂乱の場」、「ベルカント」との関連性について詳述した。第2部では制作者の立場から、これまでのオペラ彩の制作活動、とりわけ財政基盤の確立、会場の手配からパフォーマーの人選、実際の舞台化までのプロセスにおいて生じるさまざまな問題点や観客の反応、さらに今回の《ルチア》公演を通じた新たな解釈上の発見等について報告がなされた。
開催記録
2部構成
参加者:27名
質疑応答
二つの発表を受けた第3部のディスカッションでは、当該公演の指揮者であるニコレッタ・コンティ氏のトークも交えて活発な議論が展開された。この議論でもっとも大きな関心を集めたのは「狂乱」のテーマであったが、《ルチア》における「狂乱の場」がこの作品に特徴的なベルカント歌唱とどれほど密接に関連したものか、他の時代のオペラにみられる「狂乱」の場合とどのような違いがあるのか、といった点についてさまざまな観点からの意見交換がなされ、それを通じて発表者、フロアの参加者ともども《ルチア》の作品理解が大きく深まった。