English follows Japanese
第1部:オペラ/音楽劇のキーワーズ シリーズ第5回
モーツァルト以前のジングシュピール
第2部:研究発表
オペラ研究における放送アーカイブの活用の可能性―1940年代後半から1950年代前半の日本における録音を中心に―
[第2部]概要
1940年代後半から1950年代前半にかけて、放送技術の急速な発達があった。今回の発表では、こうした技術的な進歩とラジオのオペラ番組との関わりを示すという観点から話を進め、それを踏まえて放送アーカイブの活用の可能性を示した。
この時期の録音機の発達は目覚ましく、1949年から国産の長時間アセテートディスクの生産が始まり、片面で最長15分の録音が可能になった。さらに、1952年頃には、テープ録音が本格的に導入されている。こうした録音技術の発達を背景に、オペラの収録も、1949年以降、放送の現場において積極的に行われた。その収録内容は、スタジオ制作のものから、公演の中継録音まで、多岐に及んでいる。この時期に国内で制作された長時間の商業用オペラ録音は、ほとんど存在しないため、これらの放送の録音は、当時の演奏の実情を知るための貴重な資料となり得るのである。
放送技術の発達がオペラ番組へと及ぼした影響という点では、ステレオ放送の開始も大きな意味があった。NHKでは、1954年から、ラジオの電波二波を用いたステレオ定時番組『立体音楽堂』が始まっているのである。日本の作曲家は、電子音楽やミュージックコンクレートを用いつつ、ステレオ放送の新しい可能性を模索するオペラや音楽劇の作曲を行った。その代表的な例は、林光の『裸の王様』(1955)や三善晃の『オンディーヌ』(1959)などである。これらの放送テープも、当時のオペラ放送の実情を把握するための資料として、活用が可能なのである。
開催記録
質疑応答(一部紹介)
オペラのハイライト番組の作成に関するNHKの技術の蓄積、「NHKオペラハウス」や「希望音楽会」の番組内容、NHK交響楽団のオペラ放送への関与、民放のオペラ放送などを中心に、議論を行った。