2013年度4月研究例会 (第117回オペラ研究会)

研究発表

日本のラジオ放送の黎明期におけるオペラ関連番組

◇発表者:佐藤英
◇日時:2013年4月20日(土)16:30-
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 8号館 219会議室
◇言語:日本語

概要

今回の発表では、日本のオペラ受容史において放送が果たした役割を検討する試みの一環として、日本のラジオ放送の黎明期におけるオペラ関連番組を取り上げた。

最初に、1925(大正14)年から翌年に東京で放送されたオペラ関連番組から、代表的な番組を検証した。ラジオ放送とオペラの関係は、試験放送当日に始まり、カーピ歌劇団が放送に出演している。しかし、放送開始初期の番組表を詳細に検討すると、オペラの序曲や名旋律を器楽で演奏するオムニバス形式のプログラムがメインで、声楽家によるオペラ関連番組は必ずしも多くなかったことが分かる。藤原義江のような話題の歌手が出演する番組は、声楽付きのオペラ作品に触れることができるという点で、当時のリスナーにとって、貴重な機会だった。

1925年7月に本放送が開始した後には、オムニバス形式の番組と共に、オペラの一作品に焦点を当てたプログラムも組まれるようになる。「カルメンの夕」をはじめとする、この種の番組の成功に後押しされたためもあろう――1926年5月には、全曲の約半分にとどまったとはいえ、ヴェルディの《アイーダ》の放送が実現している。その後、《椿姫》を取り上げた「教養講座」(8月)や、ロシア歌劇団による《アイーダ》(10月)など、有名曲を中心とする番組が、この年に放送された。

オペラに関する番組規模の拡大の過程で登場したのが、1927年から開始される「放送歌劇」のシリーズである。発表の最後では、このシリーズの曲目や当時の放送の様子などを、リスナーの感想を紹介しながら概観した。

発表者プロフィール

※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

参加者:19名

質疑応答

ラジオ放送と浅草オペラの関係、当時の録音の有無、リスナーの反応、藤原義江や宝塚少女歌劇の出演番組、聴取者獲得のための努力が放送局側であったか、などを中心に、議論が行われた。