第1部:書籍出版に向けた相互査読(研究員・会員向け)
第2部:研究発表
アメリカにおける音楽劇の展開 ―ガーシュイン『ポーギーとベス』(1935)をめぐって―
◇発表者:仁井田千絵
◇日時:2012年7月21日(土)15:00-18:30
◇会場:早稲田大学 戸山キャンパス(文学部) 33号館 2階 第一会議室
◇言語:日本語
第2部概要
1935年に初演されたガーシュイン作曲の《ポーギーとベス》は、「サマータイム」という歌を通して今日知られている。傑作として評価される一方で、その生成過程を辿ると、この作品は、様々な音楽的・文化的背景が混在するアメリカにおける一つの象徴とみることもできる。
発表では、原作、ガーシュインのキャリア、1920年代に隆盛した黒人音楽などの流れを踏まえ、「アメリカのフォーク・オペラ」と銘打たれた本作品が音楽劇としてどのように位置づけられるのかを考察した。また随時上演に関する映像に触れ、最後に現在ブロードウェイで上演中のミュージカル化されたプロダクションを紹介することで、本作品が今日持つ意義、上演する際の課題についても触れた。
開催記録
2部構成
参加者:27名
質疑応答
質疑応答では、作曲者がオペラ作曲を試みたことの時代的背景、オペラとミュージカルの楽曲スタイルの違い、歌詞にみられる黒人のしゃべり言葉の語法、上演の配役や観客層をめぐる人種の問題など、様々な質問がなされた。これに対し発表者からまず、作曲者はシリアスな楽曲への志向も高かったこと、また初演当時は、映画などポピュラー・カルチャーにおけるオペラの人気が高まっていたことの説明があった。
続いて、本作品をめぐる人種の表象に関して様々な問題があり、アメリカ国内におけるオペラ・ハウスでの上演に初演から40年以上を要したこと、今日ではコンサート形式の上演の方が多いことなど、上演の困難さについても言及があった。さらに、作曲者の意図から外れた、上演時間の短縮や歌唱法の変更によるミュージカル化の試みなど、解釈が多様化している現状についても補足された。