2018年度11月研究例会(第175回オペラ研究会)

研究発表

グルックのオペラ・コミックとウィーン宮廷劇場

◇発表者:坂巻彩華
◇日時:2018年11月10日(土)16:30-18:00
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館702教室
◇言語:日本語

概要

クリストフ・ヴィリバルト・フォン・グルック(1714-1787)はウィーンの宮廷作曲家として活躍し、彼の手掛けた改革オペラは、オペラ史における重要な位置を占めている。改革オペラ第1作にあたる《オルフェーオとエウリディーチェ》上演以前、つまり1750年代半ばから60年代初頭にかけて、グルックはオペラ・コミックの編曲および作曲活動に専念していた。そして7作に及ぶオペラ・コミックがウィーン宮廷劇場およびシェーンブルン宮殿といった離宮の劇場において上演された。

グルックのオペラ・コミックの集中的な創作活動には、劇場におけるフランス様式導入の動きが背景にある。ウィーン宮廷劇場支配人ドゥラッツォとパリのオペラ座の劇場支配人ファヴァールとの往復書簡の内容、および当時ウィーンで出版された刊行物「ウィーンの劇場のレパートリー」(1757)からもフランス様式導入の様子が明確に見て取れる。

本発表では、グルックのオペラ・コミック創作活動を取り巻くウィーン宮廷劇場の運営の実態を、上記の一次資料や劇場の上演演目から明らかにする。フランス様式導入の根底には、当時事実上オーストリアを統治していたマリア=テレジアのドイツ劇に対する反感や教育面の方針が反映されている。またグルックのオペラ・コミック作品においては、次第にウィーンの色を強めていくことがヴォードヴィルの廃止や台本の内容の変更から明らかとなる。その後に続く改革オペラの前段階を形成した存在として、グルックのオペラ・コミック作品の位置付けを再検討する。

発表者プロフィール

桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻音楽学副専攻を経て、現在慶應義塾大学文学研究科美学美術史学専攻(音楽学)修士課程2年に在籍中。

※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

参加者:11名

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