2018年度5月研究例会(第171回オペラ研究会)

シンポジウム

カタリーナ・ワーグナー演出《フィデリオ》をより楽しむために

◇報告者:佐藤英 新田孝行 森岡実穂
◇日時:2018年5月19日(土)16:30-18:30
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス3号館 406演習室
◇言語:日本語

概要

来たる5月20日から東京の新国立劇場でベートーヴェンのオペラ《フィデリオ》の新演出公演が始まる。

演出を担当するのはカタリーナ・ワーグナー(1978~)。作曲家リヒャルト・ワーグナーの曾孫にして現バイロイト音楽祭総監督であり、同世代のドイツのオペラ演出家のなかでも、その新演出が常に大きな注目を集める特別な人物である。ワグネリアンの聖地で《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(2007年)と《トリスタンとイゾルデ》(2016年)を演出し大いに物議を醸した彼女が、この春東京でベートーヴェンが作曲した唯一のオペラに挑む。これを機会に《フィデリオ》とカタリーナ・ワーグナーの演出について考えるのが今回のシンポジウムの趣旨である。

全体は三つの報告と報告者たちによる討論から構成される。まず、ドイツの音楽文化、特にその放送メディアとの関係を専門とする佐藤英(日本大学)が《フィデリオ》の作品概要と受容史について、次いで、現代のオペラ演出を理論的に分析してきた新田孝行(早稲田大学)が近年の注目すべき幾つかの《フィデリオ》演出について、それぞれ紹介したうえで、『オペラハウスから世界を見る』(2013年、中央大学出版部)の著者である森岡実穂(中央大学)が、ワーグナー作品に加えて《リエンツィ》(2008年)、《蝶々夫人》(2010年)ほかのカタリーナ・ワーグナーの過去の演出作品を振り返りつつ彼女の演出の特徴を考察する。今回の《フィデリオ》は果たして「高らかに鳴り響く自由への賛歌」(新国立劇場ホームページの紹介文より)になるのか。討論では予想や期待も交えつつ、カタリーナ・ワーグナー演出《フィデリオ》の見所を様々な角度から検討したい。

発表者プロフィール

佐藤英
日本大学法学部専任講師。博士(文学)。専門分野は近現代ドイツ文化研究(音楽・文学)、放送文化史。共著書に『キーワードで読む オペラ/音楽劇研究ハンドブック』(2017年)、論文に 「オペラ作曲家としてのシューマン」(2010年)、「日本のラジオ放送におけるヴェーバーのオペラ《魔弾の射手》――1928年と1940年の番組の文化史的背景――」(2014年)、「ナチス・ドイツ時代のクレメンス・クラウスとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」(2016年)など。
新田孝行
早稲田大学オペラ/音楽劇研究所招聘研究員。専門分野は比較文学(音楽と演劇・映像の比較研究)。共著書に『キーワードで読む オペラ/音楽劇研究ハンドブック』(2017年)、論文に「音楽家=映画作家としてのジャン・グレミヨン――《曳き船》とオペラ、その分身」(2011年)、「ポストモダンのオルフェウス――ステファン・ヘアハイムのオペラ演出について」(2016年)、「現代オペラ演出、あるいはニュー・ミュジコロジーの劇場――ローレンス・クレイマーの音楽解釈学再考」(2016年)など。
森岡実穂
中央大学経済学部准教授。専門分野はオペラ表象分析、十九世紀イギリス小説。ジョーンズ・コンヴィチュニー・ヘアハイム・ビエイト・ヘアマン等の演出家を中心に、同時代のオペラ上演における政治的表象の問題を追跡中。著書に『オペラハウスから世界を見る』(2013年)、論文に「ヘロデから見た『サロメ』の世界」(2013年)、「台本および最近の上演にみるベルリオーズ《トロイ人》の現代性」(2014年)など。

※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

参加者:29名

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