2016年度7月研究例会(2) (第153回オペラ研究会)

【早稲田大学・テルアビブ大学共同企画】
「オペラ《ソクラテス》・プロジェクト」

サティ《ソクラテス》公演

◇演出:ミハル・グローバー=フリードランダー
◇イントロダクション:エリ・フリードランダー(テルアビブ大学)
◇出演:
ドロン・シュライファー(カウンターテノール)
池水大気(カウンターテノール)
竹之下亮(ダンサー)
ノアム・サンデル(ダンサー)
バトエル・ドタン(ダンサー)
黒川武彦(ナレーター)
八木下侑子(ピアニスト)
◇演出助手:舘亜里沙(東京藝術大学)/笠原真理子(東京大学)
◇制作:早稲田大学学生有志
◇通訳: 奥野早貴(早稲田大学)
◇主催:早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所
◇共催:早稲田大学高等研究所
◇後援:イスラエル大使館 早稲田大学総合研究機構

◇日時:2016年7月10日(日)13:00(開場12:30)/17:00(開場16:30)※全2公演
◇会場:早稲田大学 小野記念講堂
◇言語:日本語

概要

オペラ《ソクラテス》・プロジェックトのメインイベントとして、ミハル・グローバー=フリードランダー氏の演出するサティ《ソクラテス》(全三部)を上演する。同氏のギリシャ神話・哲学に対する深い洞察とオペラの声をめぐる問題意識が、ダンサー達の豊かな身体表現やカウンターテノールの特異な声にどのように落とし込まれるのか、ご注目いただきたい。微細に揺れ動き続けるピアノの音色や、各部の前に挿入されるナレーションも、本演出では重要な役割を担っている。なお、開演前にはエリ・フリードランダー氏による作品解説が行われる予定である。

イントロダクション要旨

このイントロダクションにおいて、プラトンにおける哲学と芸術とのぎこちない関係を手短に述べたい。哲学の演劇的あるいは音楽・演劇的提示の問題を確立するために、有名な対話編『国家』を主として利用する。ソクラテスという賢人の形姿を演劇的に再現するというこの問題は、プラトンの師であるソクラテスの口述の遺産を、筆記の形において、神話と悲劇とに至高の位置が与えられていた文化のなかで、確立しようとするプラトンの格闘を背景に理解されるべきである。

この非常に一般的な哲学的コンテクストから、エリック・サティの作品の考察へと移りたい。私はサティによるソクラテスの描写を、19世紀と20世紀初頭の哲学において彼に付与された様々な説明にたとえる―たとえばニーチェ、キルケゴール、ベンヤミンにおいて見られるような説明に。

サティがみずからの作品に含めることを選んだ対話編の意味に特別な注意が向けられるとともに、また彼が音楽に入れ込んだ対話編の特定のパッセージにも、特別な注意がはらわれる。こうした選択から明らかになるモティベーションについて熟考した後、われわれの認識がいかに《ソクラテス》の当制作のステージ・デザインに翻訳されたのかについて述べ、イントロダクションの締めくくりとする。

プロフィール

ミハル・グローバー=フリードランダー
イスラエル・テルアビブ大学ブーフマン=メータ音楽学部准教授、音楽学者。著書に次のものがある。『声の亡霊―オペラにとっての映画の魅力』プリンストン大学出版局(プリンストン)2005年、『オペラの来世』ゾーン・ブックス(ニューヨーク)2011年。論文その他:エリ・フリードランダーとの共著『ステージ・セッティング、ヴォイス・セッティング』「クィ・パㇽル」第21 / 1巻、2012年、アーティクル『声』「オックスフォード・ハンドブック・オブ・オペラ」オックスフォード大学出版局2014年、『少年殺しの変形―ヴァイルとブレヒトの「イェス・セイヤー」』、ザビーネ・リヒテンシュタイン編「オペラの従順な娘」ロドピィ出版2014年。現在オペラの声の演出に関する著書を完成しつつある。

  • 訪問研究者としての世界各地の大学における滞在:アメリカ(プリンストン)・プリンストン大学高等研究所、アメリカ(ニューヨーク)・コーネル大学批評理論学部、イスラエル(イェルサレム)・ヘブライ大学高等研究所、日本(東京)・早稲田大学高等研究所及びオペラ/音楽劇研究所(2016年)
  • 主要研究領域:声、死、19世紀・20世紀オペラ、オペラと映画、オペラ演出
エリ・フリードランダー
イスラエル・テルアビブ大学ラウラ・シュヴァルツ=キップ近代哲学教授。主要著書は以下のとおり。『感覚の記号―ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」を読む』ハーヴァード大学出版局2001年、『J.J. ルソー―言葉の来世』ハーヴァード大学出版局2005年、『ヴァルター・ベンヤミン―哲学的ポートレート』ハーヴァード大学出版局2011年、『判断力の表現―カントの美学に関するエッセイ』ハーヴァード大学出版局2015年。現在の研究テーマはヴァルター・ベンヤミンのアーケード・プロジェクトである。
ドロン・シュライファー
イェルサレム・ミュージック・アカデミーにて声楽を学び、バロック音楽の演奏で最高賞を受賞。アメリカ-イスラエル文化財団の奨学金を取得。「バーゼル・スコラ・カントルム」の修士号取得。イェルサレム・バロック・オーケストラ、バッロケード、キ・レッニャ・アモーレ、タ・オペラ・ズータと共演。ヨーロッパにおいても、スコラ・カントルム・ニュルンベルク、アンサンブル・ラ・モッラ、ラ・カペッラ・レイアル・デ・カタルーニャと共演を重ねている。「タラムス・ヴォーカル・カルテット」と声楽アンサンブル「プロフェーティ・デッラ・クインタ」のメンバーであり、定期的にヨーロッパ、アメリカ、カナダ、日本で上演を行っており、ヨーク・古楽国際若手芸術家コンクールで優勝。「プロフェーティ・デッラ・クインタ」とは、サロモーネ・ロッシによるユダヤの典礼音楽を含むCDを二枚、エラム・ロテムのオリジナル作品を収録したCDを二枚制作している。更に、ソロ活動として二枚のCDをリリースしている。
池水大気
東京芸術大学声楽科卒業、同年鹿児島新人演奏会にて特別奨励賞受賞。ドクター中松氏の「世界天才会議」にて国歌独唱、小澤塾アウトリーチコンサートなどで演奏。クラブパーティーでのDJと共演経験等も持つ。卒業と同時にボイストレーニング教室と古楽団体マスカラードを設立。 現在横浜市にて保育園の園長を務める。
竹之下亮
京都造形芸術大学芸術学科卒業。能楽を学びながら身体の面白さに目覚め、ダンスを始める。劇場以外でも踊り、場所の特性を活かしユーモアを交えて踊ることが持ち味。映像、写真作品をつくり、ギャラリーや美術館での展覧会にも積極的に参加している。現在イスラエル在住。
ノアム・サンデル
現代劇場アーティストでありデザイナー。イェルサレムのヴィジュアル・シアター附属学校にて研鑽を積む。イェルサレム市長最高賞、文化教育大臣賞を受賞。イェルサレム、テルアビブ、ロンドン、ミュンヘンでのフェスティバルでも活躍を続けている。
バトエル・ドタン
学際的なパフォーマンス・アーティストかつキュレーター。ダンス、サーカス、人形劇をイェルサレムのヴィジュアル・シアター附属学校にて学ぶ。イェルサレム財団賞を受賞、グロス財団奨学金を取得。ノルウェー・シアター・アカデミーに交換留学を行う。映画や劇場、アートプロジェクトでパフォーマンスを行っている。
黒川武彦
詩人・舞台俳優・映像作家。1975年生まれ。映像制作に携わりながら、様々な土地で書いた詩や身近な事柄の詩を朗読し発表している。「詩×」主宰。朗読劇「8」ブランケンホーン役。F/T14『透明な隣人 ~8 -エイト-によせて~』出演。トーキョーワンダーサイト本郷・渋谷にて足利広映像作品のレセプション朗読など。
八木下侑子
東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を同声会賞及び読売新人賞受賞を得て卒業、同大学院修士課程ピアノ専攻修了。東京藝術大学音楽学部ソルフェージュ科教育研究助手を務める。横浜市鶴見区文化センターサルビアホール・レジデントアーティスト(2012-2014)。現在Trinity laban conservatoireに於いてDeniz Gelenbe、Gabriele Baldocciの各氏に師事。ロンドン在住。
舘亜里沙
東京藝術大学楽理科卒業、同大学大学院にて音楽学博士号取得。2009年安宅賞受賞。2008年よりオペラを中心に演出を手掛け、2010年よりP.コンヴィチュニー氏のオペラ・アカデミーに参加し、研鑽を積む。主なオペラ/音楽劇の演出作品に《ペール・ギュント》《ヘンゼルとグレーテル》《トリスタンとイゾルデ》《蝶々夫人》など。創作コンペティションVol. 5最終上演審査にて、三島由紀夫『葵上』を発表。公式HP: http://arisa-tachi-411.jimdo.com/
笠原真理子
2014年東京大学文学部美学藝術学卒。同年 同大学院文化資源学研究専攻へ進学し、コンビチュニー・オペラ・アカデミーに参加。その後、オペラ・音楽劇の舞台で演出者および演出助手を務めつつ 、修士論文『マノンの表象~オペラ演出の視点から~』を執筆。本年進学した博士後期課程では、「オペラにおける宗教的要素の演出」をテーマとした研究を行っている。

※プロフィールは発表当時のものです


開催記録

入場無料、参加申込不要
参加者:100名(13時の部)/85名(17時の部)