2013年度11月研究例会 (第123回オペラ研究会)

第1部(会員向け):オペラ/音楽劇のキーワーズ シリーズ第1回(15時15分〜16時15分)

第2部(一般向け):[講演](16時30分〜18時45分)

現代オペラ演出をめぐる諸問題ー『オペラハウスから世界を見る』を出発点としてー

◇司会:新田孝行
◇ゲスト:森岡実穂(『オペラハウスから世界を見る』著者)
◇日時:2013年11月16日(土)16:30頃- (第2部)
◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 1号館 2階 現代政治経済研究所会議室
◇言語:日本語

概要[第2部内容]

11月例会は、今年3月に『オペラハウスから世界を見る』(中央大学出版部)を上梓された森岡実穂氏を招き、オペラの現代的演出について討議を行った。まず、司会の新田孝行氏が同書の内容を要約し、同じオペラの様々な演出を今日の社会問題へのメッセージ性に注目しつつ比較したその画期的な方法論について紹介した。『蝶々夫人』のケートのような脇役の造形やほんのちょっとした細部でさえ演出上重要な意味をもつことが確認された。次に、オペラ演出研究を行う上での実際的な問題について森岡氏から話をうかがった。特に、舞台写真を入手し、論文での使用許可を得る交渉の苦労が印象的だった。出席者からは、演劇の場合と異なるオペラならではの音楽と演出・演技の関係という問題をもっと論じるべきという提言も為された。森岡氏は、確かに自らの解釈や方法には自身のアイデンティティや能力の限界が反映されているが、そのことは決して否定されるべきではなく、研究者たちが協力し、それぞれの立場や得意を生かしつつ議論を重ねることが、現代オペラ演出研究というまだ確立されていない分野にとっては重要だと述べた。演出家が主導権を握ると言われる昨今のオペラ界だが、森岡氏は、演劇的側面に対して鈍感すぎる歌手たちもいまだに少なくないと指摘した。終了後の懇親会にまで及んだ活発な議論は、現代的な演出がオペラ研究における喫緊の課題であることを十分裏づけるものだった。

参考書籍

森岡実穂著『オペラハウスから世界を見る』(中央大学出版部、2013年)


開催記録

2部構成: 第1部は会員限定開催
参加者:17名