早稲田大学 総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所
Waseda Institute for Research in Opera and Music Theatre (WIROM), Comprehensive Research Organization,Waseda University
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Dr. Árni Ingólfsson’s Special Lecture
“Japanese Music in Iceland, and the Influence of Japanese Music on Contemporary Icelandic Composers”
現代アイスランド音楽に対する日本音楽の影響の実態について、アイスランドの音楽学者アルニ・インゴルフソン氏が講演を行う。具体的には、①1960年代にアイスランドのラジオで團伊玖磨や武満徹の作品、横山克也の演奏が放送され、アイスランド市民が日本の伝統音楽に関心を抱いたこと、②1970年代からアトリ・スヴェインソン(1938-2019)やトルケル・シグルビョルンソン(1938-2013)などアイスランドを代表する現代音楽作曲家の作品において日本音楽の影響が明確に表れ始めたことに関する内容である。講演の際にはスヴェインソンの《フルート協奏曲》やオペラ《The Silk Drum》(1980年)など具体的な作品を取り上げ、実際に映像や音源を再生しながらアイスランド音楽と日本音楽(特に日本の能《綾の鼓》)の比較分析を行う。そのうえで、このような影響関係が日本人作曲家とアイスランドの演奏家たちとの緊密な交流のもとで発展していったこと(細川俊夫とニューミュージック・アンサンブル「カプト」)、映画業界などにおいても反映されていること(坂本龍一の音楽にインスパイアされた『ジョーカー』、『タール』の作曲家、及び2020年アカデミー賞最優秀映画音楽賞受賞のヒルドゥル・グィズナドッティル)について注目する。
アルニ・ヘイミル・インゴルフソン:アイスランドの音楽学者で、ハーバード大学で歴史音楽学の博士号を取得(2003年)。現在レイキャヴィーク・アカデミー主任研究員。主な関心領域は中世から現代までのアイスランド音楽史で、アイスランド音楽に関する複数の著書がある。特に“Jón Leifs and the Musical Invention of Iceland”(インディアナ大学出版、2019年)は、『ニューヨーカー』誌のアレックス・ロスによって、その年の音楽に関するベストブックの1冊に挙げられた。また近著に“Music at World’s End: Three Exiled Musicians from Nazi Germany and Austria and Their Contribution to Music in Iceland” (SUNY Press, 2025)がある。2025年1月にはBBC Radio3の“European Road Trip: Early Music in Iceland”で13世紀以降のエッダに基づくアイスランドの教会合唱音楽について語っている。ピアニスト、チェンバリスト、指揮者としても欧米を中心に活躍しており、2003年にはカルミナ室内合唱団を創設し、10年間指揮者と芸術監督を務めた。彼の指揮のもとで合唱団は17~18世紀のアイスランドの古写本から音楽を集めた2枚のCDを発表し、いずれもアイスランド音楽賞の最優秀CD賞を受賞している(2008年と2011年)。
聴講料無料です。2025年4月23日までに下記のリンクより事前参加登録をお願いいたします。
ポスターPDFは こちら
lecture-opera[at]list.waseda.jp
※お手数ですが、[at]を@におきかえて入力ください
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『バロック・オペラとギリシア古典』は、2021年に開催したシンポジウムの研究発表をもとにした5編に書き下ろし1編を加えた論文集である。イピゲネイアは古代ギリシアの悲劇詩人エウリピデスの2編の悲劇の主人公として知られ、さまざまに翻案された後、ラシーヌの悲劇の成功により多くのオペラ作品で取り上げられた。本書では、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスの各地域において上演されたイピゲネイア主題、またはギリシア古典を主題とするオペラを、各地域の研究者が台本面、音楽面、上演面などから分析し、時代的な特徴や上演場所の地域性との関連を考慮に入れつつ検討した。以下が各論文の著者、題名、要旨である。
大崎さやの「イピゲネイア主題の18世紀のオペラ台本―ローマ、ウィーン、ヴェネツィア、ロンドン、パリで上演された台本を例に」
ギリシア悲劇に登場するイピゲネイアを主人公にヨーロッパ各地で書かれたオペラ台本を分析し、個々の特徴を述べた。
辻 昌宏「祝婚オペラとしての《シーロのアキッレ》」
メタスタージオ台本のオペラ《シーロのアキッレ》の生まれるきっかけと、その後、そのリブレットが初演とは異なる作曲家たちによって様々な機会に作曲された経緯と、バージョンによる主要な相違を明らかにし、祝婚オペラというカテゴリーを提唱した。
大河内文恵「18世紀のベルリンにおけるギリシア悲劇を題材とするオペラ:C.H.グラウンの2つの《イフィゲニア》を例に」
1728年ブラウンシュヴァイク、1748年ベルリンで上演されたグラウンの《イフィゲニア》を比較し、音楽史上の意義を考察した。
森本頼子「18世紀ロシア宮廷におけるオペラ・セーリア上演の実態:ギリシア悲劇を原作とした作品に注目して」
ラウパッハ、ガルッピ、トラエッタ作曲のギリシア悲劇主題のオペラを取り上げ、オペラ文化黎明期のロシアにおけるオペラ上演の一端を明らかにした。
吉江秀和「ヘンデルのギリシア悲劇に基づくオペラ《オレステ》の上演をめぐって」
《オレステ》は上演回数の少なさとパスティッチョを理由に低く評価されることが多い。本発表ではヘンデルが自身の劇団の歌手の技量を示すべくこの作品を上演した可能性を指摘する。
森佳子「グルックの《オリドのイフィジェニー》と《トリドのイフィジェニー》:新たなトラジェディ・リリックの誕生」
パリ・オペラ座で初演されたグルックの二つのオペラにおける、「観客の演劇的関心を逸らさない」ためのアプローチの違いについて明らかにした。
事前登録が必要です。参加希望者はできるだけ前日の5月9日(金)までに以下のURLから事前登録をしてください。
URL: https://list-waseda-jp.zoom.us/meeting/register/tQ1E275vRL6VpLGR0s6jyg
※Zoom自動登録制なので、主催者側からはズーム招待状をお送りしません。(なお飛び入り参加も可能です。)
※ご出席の際フルネームの表示をお願いします。発言時以外はミュートおよびビデオ・オフにしてください。スクリーンショット撮影、録音、録画等は厳にお控え願います。また司会者の指示にしたがってください。
オペラ/音楽劇研究所:https://prj-opera-mt.w.waseda.jp/
e-mail address: operaken-uketsuke[at]list.waseda.jp ([at] = @)
(この例会案内は後ほど Facebookと X(旧Twitter)でも発信されますので、そちらでも見ることができます。)
大崎さやの
東京藝術大学ほか非常勤講師。イタリアの文学と演劇の研究。博士(文学、東京大学)。著書に『啓蒙期イタリアの演劇改革』(単著、東京藝術大学出版会、AICT演劇評論賞、河竹賞奨励賞)他。
辻 昌宏
明治大学教授。リブレット、イタリア詩、英詩研究。アリアを詩として読み解き、それが音楽とどう融合し、相乗効果をあげてきたかを研究している。近年は、宮廷文化についても探っている。
大河内文恵
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校非常勤講師。博士(音楽学)。18世紀から19世紀前半までのドイツでのオペラを主に研究。主な著書『バロック・オペラとギリシア古典』(共著、論創社、2024年)など。
森本頼子
名古屋音楽大学、金城学院大学、愛知県立芸術大学、各非常勤講師。専門は西洋音楽史、ロシア音楽史など。著書に、『シェレメーチェフ家の農奴劇場:18世紀ロシアのオペラ文化史』(道和書院、2024年)他。
吉江秀和
杏林大学ほか非常勤講師。研究分野は18世紀ロンドンにおける音楽受容。これまで古楽アカデミー等の“古楽”分野の演奏会活動を軸に研究を進め、近年はイタリア・オペラ作品の上演背景を探る調査をおこなう。
森佳子
早稲田大学ほか非常勤講師。専門は音楽学。17世紀から19世紀までのフランスのオペラに関する研究を行う。18世紀フランスのオペラ論争やオペラ=コミック、19世紀のグランド・オペラなどに関心がある。
Baroque Opera and Greek Classics (Ronsōsha Publishing) is a collection of five articles based on research presentations from a 2021 symposium, along with one newly written article. Iphigenia, the protagonist of two tragedies by the ancient Greek tragic poet Euripides, was adapted in various ways and became the subject of numerous operas following the success of Racine’s tragedy. In this book, researchers analyze operas featuring Iphigenia or Greek classical themes that were performed in Italy, France, Germany, Russia, and England. They examine these works from perspectives including libretto analysis, musical aspects, and performance practices, while considering the characteristics of the period and the regional contexts of the performance venues.
The following are the abstracts of each paper:
Sayano Osaki
“18th Century Opera Libretti on the Theme of Iphigenia: Examples from Rome, Vienna, Venice, London, and Paris”
This paper analyzes various opera libretti written across Europe featuring Iphigenia, a character from Greek tragedy, discussing the distinct characteristics of each version.
Masahiro Tsuji
“Achille in Sciro as an Epithalamium Opera”
Clarifying the origins of the opera Achille in Sciro based on a libretto by Metastasio, and the major differences between versions, a new category of “epithalamium opera” was proposed.
Fumie Okouchi
“Operas Based on Greek Tragedies in 18th-century Berlin: Two ‘Iphigenia’ by C.H. Graun”
This study compares Graun’s Iphigenia, performed in Braunschweig in 1728 and in Berlin in 1748, and discusses its significance in music history.
Yoriko Morimoto
“The Reality of Opera Seria Performances at the Russian Court in the 18th Century: Focusing on Works Based on Greek Tragedies”
This paper examines operas on Greek tragic themes composed by Raupach, Galuppi, and Traetta, revealing aspects of opera performance in Russia at the dawn of its operatic culture.
Hidekazu Yoshie
“Handel’s Pasticcio Opera ‘Oreste’ based on Greek Tragedy: His Intention for Its Performance”
“Oreste” (premiered in 1734 at Covent Garden, London) has generally been rated low due to its limited number of performances and its status as a pasticcio opera. This paper explores the possibility that Handel staged the work to demonstrate that his singers could rival those of his competitor, “the Opera of the Nobility.”
Yoshiko Mori
“Iphigenie en Aulide and Iphigenie en Tauride by Gluck: The Birth of a New Tragédie Lyrique”
This paper clarifies the differences in approach between Gluck’s two operas, which were first performed at the Paris Opera, in order to “not distract the theatrical interest of the audience.”
Time and Date: May 10th (Sat.) 2025, 16:30 – 18:00 (JST)
Registration is required by May 9th (Fri.). Please register through the following URL:
https://list-waseda-jp.zoom.us/meeting/register/tQ1E275vRL6VpLGR0s6jyg
*Please show your full name on the display, mute yourself, and turn off the video, except when talking; refrain from taking screenshots, recordings, etc., and follow the moderator’s instructions.
Waseda Institute for Research in Opera and Music Theatre (WIROM), Comprehensive Research Organization, Waseda University: https://prj-opera-mt.w.waseda.jp/
e-mail address: operaken-uketsuke[at]list.waseda.jp ([at] = @)
(This information will be sent later by Facebook and X (Twitter). You can see it there, too.)
Sayano Osaki
Part-time lecturer at Tokyo University of the Arts. Researcher in Italian literature and theater. Ph.D. (Literature, University of Tokyo). Author of “Theater Reform in Enlightenment Italy” (Tokyo University of the Arts Press), winner of the AICT Theater Criticism Award and the Kawatake Encouragement Prize.
Masahiro Tsuji
Professor at Meiji University. Research Fields: Libretti, Italian poetry, and English poetry. His research explores the interpretation of arias as poetry and how they merge with music to create synergistic effects. In recent years, he has also been studying court culture.
Fumie Okouchi
Part-time lecturer at The Music High School attached to the Faculty of Music, Tokyo University of the Arts. Ph.D. (musicology). Her current research focuses on opera in Germany from the 18th to early 19th century. She is a co-author of Baroque Opera and Greek Classics (Ronsosha, 2024).
Yoriko Morimoto
Lecturer at Nagoya College of Music, Kinjo Gakuin University, and Aichi University of the Arts. Her research field is the History of Western and Russian Music. She has published several books, including The Sheremetev Serf Theater: History of Opera Culture in Russia in the 18th Century (Douwa Shoin, 2024).
Hidekazu Yoshie
Part-time lecturer at Kyorin University and other institutions. His main research area is the reception of music in 18th-century London. He has mainly studied the concert activities of “ancient music” organizations, such as the Academy of Ancient Music. His recent research interest is uncovering the background of performances of Italian opera works.
Yoshiko Mori
Lecturer at Waseda University and other universities. Her specialty is musicology. Her research focuses on opera in France from the 17th to 19th centuries. She is particularly interested in the 18th-century French opera debate, opera-comique, and 19th-century grand opera.
※開催報告掲載までの間、開催案内を引き続き掲載します。
English follows Japanese
2023年5月、日本の演劇カンパニーであるチェルフィッチュとロンドン在住の作曲家藤倉大はウィーン芸術週間からの委嘱を受け新作音楽劇『リビングルームのメタモルフォーシス』を発表した。この作品でチェルフィッチュ主宰の岡田利規と藤倉は、演劇と音楽のいずれか一方が前景/後景にあるのではなく、双方が舞台上に対等に存在することを目指してクリエーションを行った。本発表では、同作品のドラマトゥルクとして作品制作に関与した発表者の立場から、音楽劇における演劇と音楽のバランスについて論じる。約3年にわたる創作プロセスを振り返り、作り手側の思想は観客にどのように受容されたのか、公演評も参照しながら検討する。また2021年に岡田が演出したオペラ『夕鶴』の事例も参照し、オペラと音楽劇における音楽の位置づけの在り方の違いについても考えたい。
本シンポジウムは、大正期の浅草オペラにおいて上演された舞踊(バレエ、バレー)に注目するものである。1911年に開場した帝国劇場では、日本人を対象に初めてバレエ指導がなされたが、その養成機関である歌劇部からは、G.V.ローシーの徹底指導により舞踊家が輩出された。また後のローヤル館とあわせ、ローシーから指導を受けた者の多くが浅草オペラにて舞踊を盛り立てた。さらに多くは、その衰退後も舞踊家として活躍した。
本シンポジウムでは浅草オペラにおける舞踊(バレエ、バレー)を中心に、その前史を担ったとも言えるローシーについて、そして浅草オペラ後に展開した活動の場の一つである少女歌劇についても取り上げる。
第1部 開会挨拶 石井道子(早稲田大学 本研究所所長)
基調講演 小針侑起(芸能史研究家)
「浅草オペラ舞踊家によるその後の活動―レビュー界を中心として」
第2部 講演① 山田小夜歌(京都精華大学 本研究所招聘研究員)
「G.V.ローシーが日本に伝えたバレエーイタリア、イギリス時代の実践歴と帝劇での仕事を中心に―」
講演② 杉山千鶴(早稲田大学 本研究所研究所員)
「浅草でバレエを観た」
講演③ 中野正昭(淑徳大学)
「浅草オペラのバレエ場面―オペラ座にみる小松耕輔・石井漠のバレエ演出―」
ディスカッション
閉会挨拶 杉山千鶴
司会:大西由紀(大東文化大学 本研究所招聘研究員)
2025年3月13日(木)までに以下よりお申し込みください。
https://forms.gle/yYWN7g4DTiPNp25f9
ポスターPDFは こちら
asakusaopera-sympo[at]list.waseda.jp
※お手数ですが、[at]を@におきかえて入力ください
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発表概要:
本発表は、「観光音楽劇」について議論する糸口として、日本の温泉地におけるレビュー形式のショーをジャンル横断的に検討する。宝塚歌劇や劇団わらび座を挙げるまでもなく、各地の温泉で音楽劇が上演されてきたことは自明であり、それぞれの事例の作品や上演団体に関しては研究が進められている。他方で、それらの実践を包括的に扱う視座は、従来の研究にほとんど見られなかった。しかし近年、演劇学分野では、演劇と観光の相関を捉え直す観光演劇学のアプローチが活発化している。音楽学分野では、たとえばテュービンゲン大学共同センターでイギリスの公衆浴場・温泉街を対象としたプロジェクトが展開されており、上演の場としての温泉地を論じる機運は高まりつつある。そこで本発表では、まず音楽学・演劇学の双方における「観光音楽劇」論の前提となるような研究動向を確認する。その上で、少女歌劇・大衆演劇・バラエティショー等の実践事例から、多ジャンルの音楽が交差し異なる属性・関心・音楽経験を持つ人々が演者・観客として相互作用する場として、温泉地の劇場文化が歴史的に果たしてきた役割を考察する。
<発表者プロフィール>
京都芸術大学芸術学部専任講師。東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程修了。博士(音楽学)。専門は日本近現代音楽史。早稲田大学高等研究所講師等を経て現職。共著に細川周平編『音と耳から考える:歴史・身体・テクノロジー』(アルテスパブリッシング、2021年)、永冨真梨・忠聡太・日高良祐編『クリティカル・ワード ポピュラー音楽 :〈聴く〉を広げる・更新する』(フィルムアート社、2023年)など。近年は特に、温泉地で歴史的に実践されてきた音楽・芸能をテーマとしている。
司会者:山田小夜歌
コメント:21名の参加者があった。
問合せ先
早稲田大学総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所:https://prj-opera-mt.w.waseda.jp/
e-mail address: operaken-uketsuke[at]list.waseda.jp ([at] = @)
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Waseda Institute for Research in Opera and Music Theatre (WIROM), Comprehensive Research Organization, Waseda University: https://prj-opera-mt.w.waseda.jp/
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